皆さんはビールを飲むとき、主要な原料である「水」について考えたことはありますか?あるロータリアンのグループがこの水について考え、画期的な活動をはじめました。
グループの名前は「Beers Rotarians Enjoy Worldwide (BREW)」(世界中でビールを楽しむロータリアンの親睦活動グループ)。英語で「醸造する」を意味する「BREW」と略されるこのグループは世界中でイベントを開き、ロータリーの重点分野である水と衛生のための資金調達活動を行っています。
メンバーの一人であるスティーブン・ラックさん(米国カリフォルニア州プレザントヒル・ロータリークラブ)は次のように話します。「ビールを飲むことで、例えばアフリカの村にきれいな水を届けられます。ビール好きで、ビールを買ったお金で世界でよいことができるなら、まさに一石二鳥ではないでしょうか」
BREWのようなロータリーの「親睦活動グループ」は、情熱を同じくするロータリアンが集まるグループである一方、同じような集まりに、「ロータリアン行動グループ」があります。行動グループの場合、ある特定の奉仕分野の知識や経験を持つロータリアンがメンバーとなっており、BREWはそこに目をつけました。きれいな水の提供を専門とする行動グループと協力すれば、より大規模に活動を展開できるのではないかと思ったのです。
「ビールをつくるには水が必要ですから、切っても切り離せない関係」と話すのは、BREWの共同創設者でアクラ・ウェスト・ロータリークラブ(ガーナ)元会長のモーゼス・アイリーさんです。「ビールは世界中で愛されています。私たちの目標は、世界中できれいな水を提供することです」
BREWのメンバーは、「水と衛生のロータリアン行動グループ」と協力して、支援する水プロジェクトを選び、これらのプロジェクトに親睦活動グループ会費の25%を寄付しています。メンバーはまた、資金面でのサポートを得るために、全大陸の大手ビール会社に働きかけています。この分野ではすでに、Water.orgという非営利団体が、ステラ・アルトワから120万ドルの助成金を受けています。
ロータリーによるこのような水プロジェクトによって多くの人たちの生活が改善されます。世界では、不衛生な水が原因で毎日3,000人の子どもが、また、水を介した病気で8,000人が命を落としていると言われています。さらに、世界の多くの地域では、女性が水汲みのためにかなりの時間を費やしていることも分かっています。この同じ時間を、水汲みではなく、家族の世話や仕事、社会貢献にあてることができるはずです。
水と衛生のロータリアン行動グループ元委員長のF. ロナルド・デンハムさん(カナダ、トロント・エグリントン・ロータリークラブ)は、親睦グループとの協力に情熱を傾けています。デンハムさんは次のように話します。「当グループが水プロジェクトについて情報を提供する一方で、BREWはビール醸造元との関係を築きます。BREWのメンバーの中にはビール醸造会社の幹部もいますので、素晴らしい相乗効果があります」
ファンドレイジングの青写真
ラックさんとアイリーさんが2014年にこの親睦活動グループを立ち上げるきかっけとなったのは、「楽しくビールを飲んで、親睦を深める」というアイデアでした。つまり、ビールを通じてロータリーをもっと面白くできるのではないかと考えたのです。それだけでなく、ビールという共通の楽しみのために集まった人が「世界でよいこと」を行うという目的の下に結束できるという魅力もありました。
「『ロータリーを楽しく』というのが私たちのモットー」とラックさん。「集まってビールを飲むというのは、それだけで交流であり、みんなが平等に、一つになれることなんです」
行動グループとの協力だけでなく、BREWはクラブによるビール・フェスティバルの開催も支援しています。この手のイベントは若い人にアピールできるだけでなく、クラブのプロジェクトの募金につながり、しかも、わりと簡単に計画できます。ラックさんによれば、ビール・フェスティバル開催の留意点は以下の通りです。
• いくつかの地ビールメーカーに働きかけ、ビールを寄付してもらう
• 食べ物を振舞うか、屋台を設置する
• バンドに演奏してもらう
• テントを張る
最近では地ビール産業が成長しつつあり、その人気に便乗しない手はないとラックさんは話します。このようなフェスティバルは大抵2時間程度で、配布するビールはコップに少量、しかも長い列に並ぶことになるため、ゲストが酔っ払ってしまう危険はありません。
カリフォルニア州のダンズミュア・ロータリークラブは毎年8月、「The State of Jefferson Brew Fest」を主催しています。1,500人ほどの来場者があるこのフェスティバルでは昨年、クラブのプロジェクトのために15,000ドルの募金に成功。今年は、自家製ビールのコンテストとゲーム大会も同時に実施し、来年は2日間のイベントとすることを計画しています。この他に人気が高まっているフェスティバルは、カリフォルニア州の「Weed Brew Fest」やフロリダ州の「Brew on the Bay in Key Largo」など。BREWでは、ロータリークラブが主催するビール・フェスティバルを推進しています。
クラブの士気を高めるのにも効果的
ノースカロライナ州フランクリン・ロータリークラブ元会長のレニー・ジョーダンさんは、地元で醸造所を経営しており、BREWについて知ったとき、早速20人のクラブ仲間とグループに加わりました。
「カジュアルな雰囲気の中で会員が集まれるのが魅力的」とジョーダンさん。「この親睦活動の一環で行った日帰り旅行に参加したある女性が、クラブに入会してくれました。親睦活動は、会員増強につながるだけでなく、会員の士気を高めるにも効果的です」
単にビールを楽しむだけでなく、メンバーはビールに関する知識も深めています。例えば、水組成の違いで、地域特有のビールができるということ。アイルランドのダブリンは黒ビールで有名ですが、その理由は、水のアルカリ含有量が高いため。イースト菌はアルカリ性の高い水だとうまく発酵しないため、現地のビール醸造者はあらかじめ大麦をあぶり、アルカリ性を低くするという手法を開発。こうすることで色の黒いビールになったのだそうです。また、軟水で有名なチェコのピルセンでは、世界初のピルスナー・ビールが生まれました。
ビールにはこんな知られざる秘密もあります。歴史的に、ビールは安全な飲み水がない場所で、水の代わりとして飲まれてきました。ビール醸造のプロセスで煮沸するため、水よりも安全なのです。ラックさんによれば、水が飲めない地域で、非常に美味しいビールが作られているケースもあるとのこと。
「アトランタには色々な種類の地ビールメーカーがあり、ロータリアンが経営しているメーカーもあります」とラックさん。「友愛の家のブースでビールの試飲も計画しています。ビールの親睦活動なのですから、やっぱりビールを振舞わないと」